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mild country

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さよならなんて


栗色の髪をした小柄な女性がいた
目には青いコンタクトをしている
どこかで会ったような気はしなかったけれど
学生のころ授業中居眠りをしていると
隣で変なちょっかいやくだらない話で
笑わせてくるような無邪気な感じの子
一緒にいると楽しくて、
心がすっと楽になるような気がした
何となく彼女の奥の方に自分の見たことのない
とても綺麗な景色が見えていて
その場所が愛おしく感じていた

その日はとても久しぶりに会う約束をしていた
「久しぶりー!」なんてことは口にせず
二人とも笑顔ですっと手をつないだ
自分の部屋に着くと電球が切れていたので
ロウソクを2個つけて他愛のない話しで盛り上がり
冷蔵庫に買ってあったプリンを二人で食べた
笑い疲れたあとに少し沈黙が続くと
彼女はそっと自分に寄り添ってきた
何も言わずに自然にぎゅっと抱きしめた
とても温かかった

音楽はもう止まっていたのだろう
時計の針の音が妙に耳に残る
23時を過ぎていた
「明日仕事だよね。帰らないと」と彼女が言う
「駅まで送るよ」と言って茶色の上着を着た
駅までの道ではあまり話はしなかったけれど
それでも何だかとても気持ちがよかった
駅の側までくると
「ありがとう」と言われたので
そのままキスをすると
彼女は頬にキスを返した
「じぁね。」と言って手を振ると
彼女は両手を振って
「さよなら」と笑顔で言った

彼女が素敵な場所へ向かうことは知っていたし
これが夢だということにも
少し気がついていたんだと思う
寂しい気持ちはあったけれど
不思議と悲しい感じはしなかった



すっきりとはしない月曜日の朝
いつもの仕事へ向かう
昼休みに昼寝をして起きると
雲一つない空


さよなら か

さよなら って今までちゃんと言ったことないな
さよならなんて ってずっと思っていたから
さよなら ってちゃんと言うことは
大切なことなのかもしれない
なんてことをふと思った


















by mild-country | 2015-10-12 23:32 | 日々
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