海辺の荒野で撮られた50年前のネガフィルム
フィルムケースの中には5枚のネガ
光に透かして見ると
荒野に咲いた綺麗な花が写っている
とても綺麗だったのでずっと取って置いた
こういうのが所謂 とっておき と
いうのだろうか...
先日の骨董市に持っていき
売っているのか分からない配置で
並べて置いた
たまに 自分で箱から出して見ながら
お昼前に一人のおじさんが
自分のブースを見ていた
おじさんはネガフィルムの箱を開け
光に透かして見ていた
流石におじさん同士でその綺麗さを
話す気にもなれず そっと見守っていると
これ San Francisco ? と聞かれので
とっさに San Francisco です と嘘をついた
おじさんは何も言わず
いろんな商品を見ていた
しばらくして またネガフィルムを手にして
これください と言った
あ さっきの嘘です
50年前の城ヶ島ですよ
San Franciscoみたいなもんですけど
と冗談を言うと
やっぱり何も言わずに
これください と言った
ただ普通に嬉しかった
行ってみてもいないくせに
あの風景は もう
San Franciscoだと思うことにした
その日の午後
とても綺麗なアメリカ人の女性が
5枚の花の絵葉書を買って
にっこり微笑んで帰った
あの子はきっとSan Francisco出身だね
つづく…